5月2日
朝、眠い目をこすりながら小雨降る青森駅に向かい、特急「つがる」6号に乗り込む。特急「つがる」はいつもならE751系で運転されているが、この列車は特急「スーパー白鳥」で使用される789系であった。考えてみればこの車両に乗るのは始めてである。青森駅を出ると早速線形のよい東北本線をガンガン飛ばす。7時前だが乗客は以外に多く自由席はほぼ満席だ。この区間は昼間に通ったことがなかったので新鮮である。窓の外を眺めていると時折海が見え隠れ。北斗星で通過した時は深夜なので全く気が付かなかったが意外と海に近いところを走っているのだ。
野辺地で更に乗客を増やして三沢に到着。本当は9時過ぎに青森を出る予定だったのだがなぜこんな朝早くに変更したのかというと、三沢と十和田市を結ぶ十和田観光電鉄を乗り潰そうというわけである。しかしこの十和田観光電鉄、一つ大きな困った点がある。それはJRとの接続がかなり悪いのである。自分が三沢に着いたのは7:29だが、十和田観光電鉄の列車は7:21に三沢を発車してしまい、次の列車は8:09・・・同じ鉄道業なんだしもう少し接続を改善してほしいものだ。
十和田観光電鉄の駅舎に向かうとそこには時が止まったような光景があった。木造の改札やうどん屋などまさに昭和。木のベンチに座って待つこと20分、十和田市から列車が到着した。やはり主な乗客は学生のようだ。大量の学生が降り、落ち着くのを見計らって改札が始まった。自動改札が普及したこの時代、切符を切ってもらうのはなんだか懐かしい。停車していたのは元東急の7700形。この車両に乗るのも久しぶりだ。パラパラと乗客が乗り込んで発車。動き出してみてビックリ、インバーター制御ではないか。地方の中小私鉄としては非常にいい車両を使っている。

列車はインバーターを唸らせながら急勾配を登り大曲に到着。ここからは平坦な区間が続く。うーむ景色はやや単調か。しかし途中の七百駅にはこの車両が来るまで使われていた車両を見ることができた。三農高前からは桜並木に沿って走り、のんびりとしたムードで終点十和田市に到着。復路は花見ツアー(?)の客が大勢乗り込み結構な混雑であった。

三沢に戻り、普通列車で野辺地へ。ここから大湊線で下北へ向かう。やってきた快速「しもきた」はキハ110ではなく、なんとキハ40。窓が開けられる!と早速窓を開け、ホームで飲み物を買っているといきなり扉が閉まりはじめたのであわてて車掌さんに再開閉してもらった。ホントすいませんでしたorz
野辺地を出てしばらく内陸部を走り、有戸を過ぎると列車は陸奥湾に沿って走る。遮るものはなにもなく、線路に沿ってひたすら低い木々と陸奥湾が続く。晴れていれば津軽半島も見えたのだろうが本日は生憎の曇り。まあ予報では雨だったので降っていないだけマシか。陸奥横浜からは海岸線は遠くなり再び内陸部へ。景色を楽しんでいるうちに下北に到着。自分を含む結構な人数が下車した。
大湊線は野辺地から大湊までを結ぶローカル線であるが、この路線の中心は終点の大湊ではなくこの下北である。以前はここから旧国鉄大畑線が分岐しており、JR化後に第3セクターの下北交通として大畑まで結んでいたのだが現在は廃止され、バス転換されている。そんな経緯もあり、駅前からは様々な方面へのバスが運行されている。自分はその路線の一つに乗り込んだ。それは5月〜10月まで運行されており、極楽浄土とも地獄とも呼ばれる場所、恐山へ向かう路線である。下北駅から下北市街へ入る。だいぶ駅と中心街は離れているようだ。下北バスターミナルを出てすぐに旧田名部駅跡を発見。どうやらここが下北市街の最寄り駅で、一番賑わっているこの通りは駅前通りだったようだ。バスターミナルが下北駅ではなくこの場所にある意味が分かった。
下北市街を抜けるといよいよ山道を走り始めた。車内には恐山を紹介するアナウンスが流れ、乗客は皆景色を見ながら耳を傾ける。すれ違いができるのか危うい道を急カーブを繰り返しながら進むと、標高も上がってきたようだ。雪がかなり残っておりビックリ。冬季運休も頷ける。途中有名な冷水が湧き出ているポイントで運転手さんがバスを停めてくれ、「飲んできていいよ」とサービスしてくれた。冷たくて美味しい。この水は1杯飲めば10年、2杯飲めば20年、3杯飲めば死ぬまで若返ると言われており、死ぬまでって・・・と思いつつしっかり3杯飲んだのであった。

下り坂を下ると湖が見えてきた。宇曽利湖だ。左手に川と赤い橋が見える。この川は三途の川のモデルになっっており、悪人には赤い橋が針の山に見えてこの川を渡れないそうな。要するに悪人は極楽浄土に行けないという話の起源だろうか。

恐山の境内前に到着し早速散策開始。帰りのバスまで50分ちょいしかないのでサクサクまわらねば。しかし本当に荒涼としている。岩場には誰が置いたのか、風車や小石が積み上げられた塊がいくつもあり、確かにこの世の雰囲気ではない。親より先に亡くなってしまった子供はこの岩場でずっと石を積み上げるのだという。また真っ赤な池のい水や噴き出す硫黄臭も一層その雰囲気を濃いものにしている。極楽浜に立って宇曽利湖と山々を見ていると不思議な気分になった。自分にはここが極楽なのか地獄なのかは分からない。しかしこの世でないことは確かなようだ。



サクサク見て回ったので少し時間が余った。境内に温泉があるが今回はパスし、せっかくだから先程見た赤い橋まで歩いてみることにしよう。随分傾斜のきつい橋で、滑り落ちたりしたらオレは極楽へ行けないんじゃないかとビクビクしつつ慎重に渡りきった。よかった、現世に無事戻れたようである。近くのバス停で待っているとバスがやってきた。さっきと同じ運転手さんで、手を上げると停車してくれた。

再びバスで下北駅へ戻る。復路では往路と違う恐山の解説が流れ始めた。結構凝ってるな。今回は地元に伝わるエピソードが中心で、娘をなくした親の話などは思わずホロリときてしまった。車ではおそらくこのような言い伝えや概要は知ることができなかっただろう。地元の会社ならではといった感じで非常にいいことだ。バスは山を降りて下北市街に入った。
田名部駅跡を通過する時、駅跡前にJRバスが停まっているのが見えた。自分が今回使用している青森・函館フリーきっぷは田名部〜大湊〜脇野沢間のJRバスが利用可能なのだが、バス停の位置などが分からないので断念し、下北駅から大湊まで列車で向かう予定だった。しかし下北バスターミナルに到着する少し前にJRバスの停留所も発見。運転手さんに聞いてみるとそこから乗り換えられるとのことで予定を変更して下車。先程のバス停まで歩いてバスを待つ。
乗り換えたJRバスはガラガラで、大丈夫なんだろうか・・・と思っていたら下北市街地でどんどん乗客が増え、満員になった。心配は杞憂だったようだ。その後大湊駅前で下車。予定よりずいぶん早く着いたが何もない・・・。近くのコンビにでとりあえず昼飯を購入し、近くの小さな神社の境内に座って食べる。よく漫画などでこういう描写があるが、縁日以外で実際にやったのははじめてかもしれない。食べ終わった後しっかり片付けて一礼し駅へと戻った。
駅に戻ると意外に大勢の客が列車を待っていた。乗車待ちの列に並びしばらく、下北方面からの列車が到着した。当初の予定ではこの列車に下北から一旦乗車して折り返す予定だったのだが、おそらくそれでは窓際には座ることができなかっただろう。予定を変更しておいてよかった。ほぼ満席で大湊を発車。次の下北駅で更に大量の客を乗せ野辺地へ。客もほとんどが野辺地まで乗り通しであった。
野辺地から特急「つがる」17号に乗り青森へ。青森からいよいよ青函トンネルを抜け函館へ向かう。この区間も昼間通ったことがないので楽しみだ。乗車する列車は弘前〜函館間で桜シーズンに運転される臨時特急「さくらエクスプレス」。なぜわざわざ指定席特急料金を払ってまでこの列車を選んだのかというと、それはこの列車自体の特殊性ゆえである。この列車に使用されているのはJR北海道のリゾート気動車「ノースレインボーエクスプレス」。なんだかんだで北海道に行くと1回は乗車している縁のある車両だ。しかし特殊なのはそこではなく運転の仕方にある。まず弘前〜青森間はディーゼル特急として走るのだが、この列車は青函トンネルに対応していないので青函トンネルに入ることができない。そこで青森〜函館間はなんとノースレインボーの編成を無動力状態にして客車扱いとし、前方にED79型電気機関車を連結して運転する、動力を持つ車両の前に機関車を連結して運転という前代未聞の運転方式が取られているのだ。

自分が今回指定したのは5号車1A席。この列車は運転席越しに前面・後面展望が可能なので、進行方向一番後ろから流れ去る景色を楽しもうというわけである。二週間前に席を取った時はかなり空いていると言われたので函館までゆっくり楽しもう・・・しかし車内に入ってみるとやけに騒がしい。しかも聞きなれない言葉が・・・そう、車両の後側半分ほどに中国人ツアー客が乗車していたのである。しかも自分の席はその一番奥。うわーやっちまったー・・・。隣のおじいさんにジェスチャーを出すと日本語が返ってきた。一応日本語も喋れるようなので結構いい身分の人なのだろうか。検札に来た車掌さんが「3号車が結構空いてますんでそちらに座ってもいいですよ」と親切に声をかけてくれたので真面目に移動を考える。
列車は津軽線内をゆっくり走る。今回は機関車に牽引されているのでディーゼル列車特有のアイドリングやエンジン音がなく、過去の乗車時と違いなんだか妙な感じだ。しばらくすると隣の人が話しかけてきた。日本語がやや片言ながらも喋れるので、こちらもジェスチャーを使いながら分かりやすい言葉遣いで会話する。今日は弘前の桜を見た後で、この青函トンネルを一度通ってみたかったのだという・・・なるほど。車内アナウンスもないようだし、言葉を選びながらこの路線の概要を説明する。おじいさんは真面目に聞いてくれてこちらも気分がいい。
列車は蟹田を出て海峡線との分岐点に差し掛かった。自分は運転席越しに写真を撮るため、カメラ片手に席を立ちスタンバイ。するとおじいさんも席を立って景色を眺めはじめた。なんとなく打ち解けた雰囲気になって、写真を撮りつつそのおじいさんと会話が弾む。津軽今別を通過してしばらく、右手に青函トンネル入口の目印である噴水が見えてきた。「入りますよ。青いネオンが2回見えたら入ったということです」とおじいさんに教えると、列車はトンネルに入った。青いネオンが二回連続し、おじいさんは歓声をあげる。周りの人も青函トンネルに入ったことに気づいたようで歓声があがった。その後トンネルの長さ・深さや管理システム、海底駅の概要や新幹線対応工事など自分の知っている範囲で青函トンネルの概要や役割を説明した。自分が青函のトンネルの解説をし、おじいさんがそれを周りの人に中国語で説明する。なんだかツーリストにでもなったようで妙な気分だ。結局木古内まで二人とも立ちっぱなしで流れ去る景色を見ながら話し込んでいた。

木古内を出ると列車は江差線をのんびりと走る。海岸沿いの高い所を走るので、晴れていれば青森や下北半島が見えるのだが今日は曇り。再び席に座りおじいさんと話していると、遠くに灯りが見えてきた。おじいさんに「あれが函館の灯りですよ。」と説明し、おじいさんに続いてみんなが窓の外に注目する。
そろそろ函館も近い。ふと、おじいさんが「今日はとても楽しかった。あなたの説明は本当によかった。今日あなたに出会えたことに感謝します。」と言ってきた。思わず面食らってしまった。そんなこと言われて嬉しくないわけがない。「こちらこそ本当に楽しかったです。ありがとう。」と握手を交わした。自分は中国という国、そして中国人に対して正直あまりいい感情を持っていなかったのだが、今回このおじいさんと色々話して、やはり国=国民と考えるのは愚かだということを実感した。むしろ自分が見習わなければいけない点がたくさんあった。自分は明らかに目下の相手に対してここまで素直に感謝の気持ちを言えるだろうか。
函館に到着し、おじいさんともう一度握手を交わして別れた。ツアーでは明日は洞爺湖を見た後札幌へ向かうらしい。満喫してくれればなによりだ。ありがとうおじいさん。こちらこそとても楽しいひと時でした。駅を出て函館山を見る。今日函館山に登って夜景を見る予定だったのだが頂上が全く見えないのでパス、早めにホテルにチェックインしてゆっくり過ごすことにしよう。明日は晴れますように・・・。
5月2日のルート
青森()→東北本線特急「つがる」6号→三沢(7:29/8:09)→十和田観光電鉄普通列車→十和田市(8:37/8:48)→三沢(9:14/9:28)→東北本線普通569M→野辺地(9:54/10:06)→大湊線快速「しもきた」→下北(10:51/11:00)→下北交通→恐山→(11:43/12:30)→下北バスターミナル(13:00/13:02)→JRバス東北→大湊(13:17/14:15)→大湊線734D→野辺地(15:15/15:34)→東北本線特急「つがる」17号→青森(16:04/16:24)→特急「さくらエクスプレス」→函館(19:11)
次回は5月3日の模様をお送りします。山と湖とSL。